金継ぎをした話

今月初めのこと。

ある日、いつものように朝、玄関に飾っている野崎遊河童先生作の巳様と宇賀神様に日本酒のお供えをして、傍に置いてある南部鉄器のお鈴を鳴らそうと思って先端部分を指でつまんだら、つまんだ場所が悪かったらしく、スルッと指からお鈴が滑り落ちてしまい、宇賀神様の置物に当たってしまいました。

「コツン」という嫌な音がして宇賀神様を見てみると、なんと赤い座布団の上に欠片が。そしてよくよく観察してみると、向かって右側にある髭の一部が取れてしまったのです!

一瞬フリーズした後、「うわっ…」という声が出て、状況を把握。「やってしまった…」と思いつつも、すぐに汚損状況を確認しました。

不幸中の幸いか、壊れてしまったのは髭の部分のみのようで、それもどうやら粉々になっているわけではなく、塊になって取れたようです。

とはいえ、不注意によって壊してしまったことに変わりはないので宇賀神様にはごめんなさいをして、修繕を考えることに。そして真っ先に思い浮かんだのは「金継ぎ」でした。

というのも、宇賀神様の隣においてある巳様の置物を買ったときのことなのですが、その時は三輪の宿でたまたま同じ日に泊まったHさんという方に野崎先生のアトリエと作品を紹介してもらいました。そしてHさんは過去に先生の龍の置物(だったかな?)を誤って壊してしまったときに京都の有名な金継ぎのお店に修繕を依頼したと話していたのです。

「となると、やはり金継ぎのお店に依頼するか…?」と思ってネットで調べてみました。関東圏内でも割と金継ぎの修理依頼を受けているお店は多いようでした。

しかし、どこを調べてみても、ネックになったのが、金額(高い技術だから当たり前ですが)と期間(半年以上は預けないといけない)、そして何より規模でした。復元例の写真を見ると、いずれも原型をとどめていないレベルで、髭が少し欠けたくらいで依頼するのも気が引けてしまったのです。勿論、ここは個人の価値観の違いによる部分も大きいですが。

そこで、「これくらいだったら自分で修繕すればいいのでは」と思って更にネットを調べてみると、セルフ金継ぎキットというものを販売しているお店を県内で発見。

どうやら昨今、金継ぎがひそかなブームになっているとのこと。そのため日本各地で金継ぎのワークショップが開催されたり、またここ数年のコロナ禍による在宅時間の増加により自宅で手軽にできる金継ぎセットの通販の需要が高まったりしているそうです。

本来の金継ぎは本漆を使って温度と湿度調整がシビアな室(むろ)で寝かせるといった非常に難しい工程があるのですが、金継ぎキットでは植物性の合成素材を使った新うるしを使ってかぶれにくくて扱いやすくなっており、室で寝かせる必要がないものになっています。キットの漆は本物の漆ではないですが、扱いやすくて簡単に出来て、なおかつ仕上がりが金継ぎに限りなく近いのであればこれで十分だよな、と思いすぐさま購入。

翌日にキットが届き、さらにその次の日、金継ぎをしました。

無事に修繕された宇賀神様の置物がコチラ。

我ながら、良くできたと思いました。付属の説明書だけでなく、YouTube上で公開している動画を参考にしながら出来たことが大きいからですね。

作業工程としては、まず瞬間接着剤で取れた部分を付けて、エポキシパテ(合成樹脂)で欠けた部分を埋めて、ヤスリで埋めた部分を綺麗にした後に、新うるしを塗って、2日間乾燥させて完成というものでした。ただ今回、欠けた部分はかなり綺麗に取れていてエポキシパテで穴埋めする部分があまりなかったため、埋める工程とヤスリがけする工程はかなり省くことができました。

学生時代、美術の成績は5段階評価で3でしたが、無事に修理をすることができました。瞬間接着剤を無駄に出してしまって手指につき、洗い落とすのが少し大変でしたが、大変だと感じたのはそれくらいでした。48時間の乾燥を除けば1時間以内に全行程を終えたので、あっという間でした。

こういった細かい作業をする機会は最近めっきり減ってしまいましたが、楽しみながら金継ぎができました!さすがにものが壊れるのは勘弁ですが、セルフで修理する楽しさもいいものだな、と思いました。

投稿者: dragaliens

30代男性。元教師。 見えない世界に興味がある。 自分を癒やす旅を続けている。

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